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私は複雑機構搭載の懐中時計の先行きを楽観視している

私が記憶している限り、初めて懐中時計の分野に活気が戻ってきたことを報告したいと思う。いや、冗談ではない。先日、ジョンはクリスティーズのオンラインオークションに出品された彼のお気に入りの懐中時計6点を紹介した。その6点のうち4点がエスティメートの上限を上回ったのだが、残り(合計316点)を見てみると大半がひとりのコレクターが出品した懐中時計であり、これらの落札結果(訳注;エスティメートの範囲内、もしくは最低額を下回ること)の方がむしろ普通だということがわかった。

フィリップスのジョージ・ダニエルズのエドワード・ホーンビー トゥールビヨン懐中時計は(正当な理由があってのことだが)期待外れだったため、今回の記事では割愛する。しかし、先日のすべてのオークションの結果をじっくり見てみると高性能な懐中時計が何度も出てくることに気づくだろう。サザビーズのこのパテック フィリップ(モハメド・テューフィック王子の相続人が委託したもので、彼はセンスが良かった!)はとても美しいが、私はその結果に唖然とした。エスティメート上限額の15倍近くになったのだ! クリスティーズのオークションにはこれらの作品がたくさん並んでいた。そしてフィリップスのダニエルズ 以外の懐中時計の主役は、ティファニーサイン入りのパテック フィリップ 永久カレンダー・ミニッツリピーター Ref.699/3の50万ドルだった。この時計への関心の高さはパテック フィリップのRef.5236P-001という腕時計が登場したことに起因しているかもしれない。Ref.5236P-001はセンターピニオンの上に横一列の永久カレンダー表示を備えている。

では、私はメモを見落としていたのだろうか? 自粛生活を送るあいだ、私以外は皆、懐中時計と鎖を身につけていたのだろうか? 念のため、リアドン氏にこの結果についての見解を求めた。

「懐中時計は私にとって大切なものですが、今の価格は信じられません。クリスティーズのオークションでは20数点に積極的に入札しましたが、足元にも及びませんでした。ミニッツリピーターやクロノグラフ、タイムオンリーのものなど価格が非常に高かったのです」

今のところ、いくつかの例外を除いて、関心は誰もが知っているメーカーに集中しているようだ。直近の取引状況を見るとパテック フィリップやブレゲのヴィンテージが中心のようだが、オーデマ ピゲ、ジラール・ペルゴ、ヴァシュロン・コンスタンタンなどの懐中時計が好調なのも気になった。

このような関心の高まりは持続可能なのだろうか? それとも純粋に懐中時計に特化したオンラインオークションを開催したことで、一般の人でもじっくりと見て発見できるものがたくさんあったからだろうか? トレイナ氏は前者だと考えているそうだ。今回のオークションは懐中時計ブームの第一波に過ぎないと。「腕時計の価格は上昇し続けていますが、コインウォッチや懐中時計の落札結果は人々が収集価値を見出せると理解し始めた好例だと思います」

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